電車の遅延証明書に穴を開ける仕事


f:id:nozomigatakai:20180419125742j:plain

これに穴を開ける仕事がしたい。
簡単だと思うだろうけど、一日のノルマは一万枚だからあっという間に終業時間になってしまう。
同僚達と雑談しながら床にたまった穴のかすをほうきで掃いて片づける。
新人は一万枚できるようになるまで半年はかかるので、一人前になるまではベテラン達でその穴を埋めるため新人のぶんも穴を開ける。
この部署ができた時からいる神戸さん(豪快で気持ちのいい姉御肌)は一日三万枚という記録を打ち立てた。
この証明書は普段は倉庫にしまってあって、電車の遅延が起きると駅員が慌てて取りに来る。
駅員は上からまとめて取っていき、わたし達は完成した証明書を上に積む。
だからいつまで経っても下の証明書は使われず、少しずつ紙の端が黄色くなって劣化してしまった。
それに気づいた物静かでミスの少ない村上さんがたまに下のほうの証明書を上にたまった新品と交換するという地道でこまやかな作業をおこなっていて、それを見ていた駅一番のハンサム、竜蔵寺さんが村上さんを食事に誘うという事件が起きた。
それを見て、神戸さんやわたし達は竜蔵寺さんの女性を見る目の確かさについてひとしきり盛り上がった。
そんな職場な気がする。