新宿の雑居ビルで共同生活する夢を見た。
かなり治安が悪くて、みんなで出かけようと家を出た後、忘れ物をしたので取りに戻ったら雑居ビルにたむろしている男がわたし達の部屋で手を洗っていた。
シャツが醤油まみれでおかしげな雰囲気だったので、気を立たせてはいけないと思い平常心を装ってあいさつしたらニコニコしながら出ていった。
ビルの一階になんとなく立っていたら誰かに肩を叩かれたのでふり向いたら、背が高く長い髪をひとつ結びにした男がニコニコしながら片手を上げてあいさつしてくれて、不自然に片目をつぶっていたので「?」と思ってよく見たら誰かに何かで切りつけられた直後のようで、細い傷からまだ赤い血が出ていた。
ビルの地下には違法なビレバンがあって、眼鏡をかけて細い暗そうな男の店員がちびまる子ちゃんの古いおもちゃを並べて「スベっているちびまる子ちゃん」というポップをつけていた。
つまらなそうな店だなと思いながら商品をなんとなく見ていたら、白髪でアメカジっぽいきれいな服を着た男が店員をどこかに連れて行きながら「お母さんに迷惑かけたくないよね?」と話しかけていた。
このあたりで、夢の中のわたしは完全にダメなほうの世界に転がり落ちてしまったんだということに気づいた。
雑居ビルには若くて普通っぽい女の子もいたけど、「○○が殺されたらしいよ」「いい子だったのにね」という会話をしているのが聞こえて、わたしも殺される可能性があるんだ…いい子だからと言って殺されないということじゃないんだ…そもそもいい子でもない…と考えていた。
場面が切り替わって、同じ雑居ビルの違うフロアで、わたしは二人組の地下アイドルの片割れの代わりになることを要求されていた。
茶髪でスーツを着た貧相な男がお金の部分を管理するプロデューサーで、もう一人の饒舌な男が、ユニットとしての方向性を決めているようだった。
制服のような衣装を着て「宇宙代表!○○です!」というような台詞を言わされてポーズをとらされ、曲も全然覚えてないのにステージに立つ予定が組まれた。
自分が地下アイドルとして受け入れられる可能性の低さにどんよりしていると、茶髪のプロデューサーが饒舌な男に「お金のことなんですが…ビットコインで…リーマンショック前と後での費用のことを説明してもらえますか?」と弱めに問い詰めながらどこかに打ち合わせに行った。
リーマンショックの前からこういうことやってるんだ…とこの人達のアイドルプロデュース業の歴史が深いことに驚いたけど、わたしの見た夢だから知ってる経済風の言葉が深層心理を掘り下げてもそれしか出てこなかったのが理由だと思う。
共に取り残された、ステージで歌い踊るパートナーとなる女に「頑張ろうね!」と声をかけられたのでよく見ると町の奇人のような女性だったので、(この人でやれるならわたしでもやれるのかもしれないな)と思い始めていた。
二人でライブ告知のチラシを持ってうろうろしていると、お手洗いの前で妙な男性に声をかけられた。
60過ぎくらいの男性で、自分から声をかけてきたのに何も言ってこないのでおかしいなと思っていると、どうやらわたしが加入したユニットのファンのようで、相方のおばさんが「いつもありがとう~!」と笑顔で話しかけていた。
普通は街中でアイドルを見かけたら気を使って声をかけなかったりするけど、わたしが加入したアイドルユニットは末端の世界の末端の二人で構成されているので、そういう常識は通用しなかった。
男は女性に接触(アイドルと交流すること。通常は何かしらのグッズやCDを買って、そのオプションのようなかたちで話したり、写真を撮ったりする)を求めてきていて、しかもその内容が柔道の組手だった。
にじり寄る男に壁際に追い詰められそうになって、アイドルらしく振る舞っていたおばちゃんの人間らしい動揺を初めて見た。
そこからおばちゃんと男の攻防が逆転し、よきところでまた男が攻めに入り、お互い引くことのできない戦いが続いていた。
それを見て嫌になったわたしは、トイレに行ってチラシを捨てた。
そしたらそこは男子トイレで、金子ノブアキ似のキャバクラのボーイ風の男が入ってきて焦ったけど、その男はわたしのことを気にしない感じで用を済ませて出ていった。
というところで終わった。
AKIRAとか村上龍限りなく透明に近いブルーとかスワロウテイルの世界から美しさと力強さと享楽的な感じを抜き取ったような世界だった。