会話

最近、携帯電話がない生活を送っているので外で手持ち無沙汰な時にすることがなく、今までに増してぼーっとするようになった。

いつも外では音楽を聴いていたので、何も聴かずに歩いていると色んな音が聞こえるようになって面白い。

昨日は電車で隣に座っていたのがうるさいタイプの女性だったので会話がよく聞こえてきた。

餃子パーティーをしたという話をしていて、興奮気味に「水餃子はお腹にたまるけど焼き餃子はいくらでも食べられる」という話していた。

五歳くらいの息子であろう男の子を挟んで母親らしき女性に向かってそんな感じのどうでもいい話を続けていて、話のつまらなさ、一方通行さが面白くて聞いていると、ずっと相槌を打っていた母親のほうが「そういえば、わたしこのあいだ料理教室で肉まんつくったよ」と返した。

娘のほうは物凄く興味なさそうに「ふーん」と返し、母親がもう一発「おいしくできたよ」と返したのに対し、また興味なさそうに「へえ(0.4秒くらいの長さ)」と返してまた自分の話をし始めたので愕然とした。

「料理教室で肉まんをつくっておいしくできた」という話はもう少し掘り下げるべきことなのではないかと感じた。

娘は普段、子育てに追われ、冷たい夫を相手に友達もいなく暗い生活を送っているから母親の肉まんの話も聞いてあげられないのだろうか…と考えたけど、焼き餃子を無限に食べるパーティーに参加しているくらいだからそうではないと思う。

「料理教室で肉まんをつくっておいしくできた」という話の種、どういうふうにでも育っていく可能性のある新芽を枯らせる非道さ…会話の森林伐採や…と呆然としていると、息子が少しいたずらをして注意されていて、それを聞かなかったからお笑いコンビのカミナリのツッコミの時くらいきれいな音で頭をはたかれていた。

結構大きい音だったので車内も少し「…」となり、息子も大きめの声で泣いた。

娘は「ヤフオクで売れるんだからね、売るよ」と脅していた。

ヤフオクでは男児は取扱い不可だし、今の時代はメルカリなのでは…と思いながら、息子をはたくことより(わたしも結構はたかれた、こんな人間になった)、相手の話を聞こうとしないことのほうが気になった。

はたかれた息子はしばらくすると泣き止み、また楽しそうにしていた。

娘は大道芸人とのコラボはうまくいかない(娘は何らかの芸をして身を立てている人のようだった)という話をしていた。

一方通行の会話はファービー相手でもできるけど、自分が話せればよくてもやっぱりファービーじゃいくらなんでも役不足なのでそういうことじゃない。